2026年AI予測を総ざらい
22ソースを調査し、267の予測をメタ分析
こんにちは、シバタアキラです。2026年も皆さんのAI戦略の意思決定に特に重要なテーマについて発信を続けていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。購読がまだの方は下記からどうぞ。
年末から年始にかけて、実に多くの「2026年のAI予測」を目にしました。ここ数年のAIへの関心の高まりを考えれば自然な流れですが、同時に、AIを取り巻くステイクホルダーが急速に多様化していることも背景にあります。その結果、AIのトレンドを見極めるには、もはや技術者の視点だけでなく、さまざまなバックグラウンドを持つ人々の意見を踏まえながら、先を読んでいく姿勢がこれまで以上に求められていると言えます。
そこで、アメリカと日本を中心に、主要なメディア・シンクタンク、インフルエンサー、ポッドキャスト、YouTubeチャンネルによる2026年のAI予測を広範囲にリサーチし、集約し、年明けに公開しましたので、本稿と合わせてご利用ください:
モデル → エージェントを象徴する2025末の買収
年末のAI系ニュースの一つとしてMetaによるManusの買収がありました。ManusはGPT-5に対するChatGPTの位置付けのようなサービスで、裏側では基盤モデルを使いながら、エージェント技術を活用してタスクを実行するために設計されたワークフロー型のレイヤーで、そのアウトプットの質の高さから昨年大きく話題になっていました。
MetaはLlamaモデルをオープンソースで開発してきましたが、昨年は中国初のDeepSeekとQwenに水を開けられています。この買収は、モデル競争が一巡しつつある中で、価値創出の主戦場が「エージェントレイヤー」に移りつつあることを象徴する動きと言えるでしょう。
今回の集計、分析にはManusを多用しました。残念ながら、最終的なアウトプットに至るまでにはかなり多くの介入(と比較的高価なクレジット)が必要ではありましたが、ビデオやポッドキャストの聞き取りなど、ChatGPTにはない機能の恩恵を受けることができました。
さまざまなソースの予測をトピック分類して集計した結果が下記です:
2026年こそ、「AIエージェントの年」に
一番多かったのはちょうど今話題にあげたAIエージェントです(一覧)。昨年初頭からAIエージェントですが、2025年企業におけるAIエージェント導入のインパクトは「期待はずれ」と実務者も専門家も口を揃えます。開発手法はまだ確立されておらず、また業務レベルで使えるようになるためには、AIモデルそのものの性能向上に加え、業務知見を踏まえたさらに深い開発が必要になることが認識されました。
一方で、前述のManusのように、AIエージェントを着実に進化させているプレーヤーもあり、2026年「こそは」AIエージェントが大きく飛躍する一年になるとの意見が多く見られました。具体的にはソフトウェア開発支援、従業員監視、生産性ツール、顧客サービス、金融取引、科学発見、サイバー攻撃・犯罪などの用途が挙げられています。それに伴ってガバナンスや信頼性などの課題も示唆されています。
総じてThe AI Daily Briefが予測している「エージェントラボ vs モデルラボ」の駆け引きが注目です。モデルそのものの性能が飽和しつつある状況で、エージェント開発にフォーカスする企業がより強い力を持つようになるでしょう。特に注目企業として、ソフトウェア開発エージェントのCursor, Cognition (Devin), Replit, Lovableなどが挙げられています。
AIバブルは続くのか
昨年末にかけて沈静化した感のあるマーケットですが、2026年はどこに着地するのか、多くの予測がありました。AIバブルに関する予測をセンチメント分析したところ(下図)
悲観論は思いのほか少なく、バブルは落ち着いた、ないしバブルが続くとする意見が多く見られました。2026年の注目AI系IPOは昨年暮れに噂が出たAnthropicで、複数のソースが5000億ドル規模の評価額を支持しています。またNo Priors Podcastでは他にも主要なAIラボのIPOを予測しているのに加え、NYUのSternビジネススクールのScott Galloway教授は、「AIがS&P 500の最大のセクターになる」と予想しています。
このセクションを書いている最中にも、NVIDIAのジェンスンファン氏のCESでの発表で、サンディスクの株価が28%伸びるなど、マーケットの注目度は今年も高く、敏感に反応する状況が続きそうです。中でも不吉なシグナルとして、Wiredは「OpenAI初の大規模レイオフ」を予測しています。昨年はSoraやAtlasブラウザーなどさまざまなサービスをローンチしている間に、本丸のモデル性能でGoogleに追い抜かされてしまったOpenAIですが、B2Cサービスの宿命で大量のGPU設備投資を継続していく体力が疑問視されています。
関連して、2025年はテック各社が軍拡競争スタイルでデータセンター建設を表明し、エンタープライズ各社もAI支出を発表してきましたが、Forresterが予測しているように、価値創出の遅れから2026年に予定していた支出の延期が発表される可能性もあります。
2026年は「AIにいくら投資したか」ではなく、「AIで何を生み出せたか」がより厳しく問われる年になるでしょう。投資額やGPU規模ではなく、アウトカムの説明能力そのものが競争軸になりつつあります。
フィジカルAIは研究段階を出ない
AIエージェントの次の成長株として注目されているのがフィジカルAIです。今年のCESでも繰り返し見られるワードで、まさに今週の各社の発表が注目されているところです。今回の予測の中では8件と少数の予測数ではありましたが、日経BPは「フィジカルAIが日本の救世主に」と予測しています。
フィジカルAIというと、各社が開発を急ぐ人型ロボットですが、これに関しては控えめな予測が多く、洗濯をたたむ程度の「一芸特化型」程度のものが小規模に展開される程度という意見が多数派です。
昨年話題になったヒューマノイドの一つ、1X社のNEOは、デモのほとんどを人間が裏側で操作していました。また別の注目企業Gen-0も、汎用的ロボットを志しながらも、訓練のためには人間が一つ一つの作業をやって見せてあげる必要があり、汎化性能の獲得にはまだ大きなブレークスルーを待っている状態です。このような背景から、私も2026年の段階ではフィジカルAIの導入においては大きなインパクトは生まれないと考えていますが、リサーチ対象として重要な位置付けであることに変わりはないでしょう。
フィジカルAIの訓練場としても注目されている「世界モデル」の開発にはGoogle DeepMindほか、高い技術力を持つ研究所が取り組んでおり、DeepMind CEOのDemis Hassabisも2026年のリリースを示唆しています。インタラクティブなビデオ空間が生成され、その中でVR体験ができると、人間にとっても楽しそうですね。この点については、Andreessen HorowitzのJon Laiも、今年ワールドモデルの実用化がゲームやシミュレーション領域を起点に進むと指摘しています。
ソブリンAIは日本にとって重要なのか
トピック分類として大きく扱われてはいないものの、複数のメディアがソブリンAIに関する予測を提示しています。AI技術を国家インフラの一部として捉えるのであれば、「日本は『AI基本計画』に後押しされ、単なるAIの利用者から開発者へと転換する」とする日経クロステックの見立ては、ソブリンAIの流れを後押しするものと言えるでしょう。
もっとも、生成AI技術はいまだ急速な進化の途上にあり、最新動向を追い続けるだけでも容易ではありません。日本がどこを目標地点と定めるのか、その戦略的な位置づけがあらためて問われています。加えて、韓国が基盤モデル開発における技術力で先行している現状も、無視できない要素です。
2018年からAI予測を継続してきた State of AI Report では、「一部の国がソブリンAIの開発に失敗する結果、『AI中立性』が外交政策ドクトリンとして浮上する」と予測しています。実務レベルでは、複数のAIプロバイダーを併用する戦略や、オープンモデルを重視する姿勢、さらには国際監査や透明性の確保を外交上のカードとして活用する動きが想定されます。
ソブリンAIを保有しているか否かが、将来的に国家主権の問題へと発展する可能性は十分に考えられます。特に行政・医療・司法といった領域にAIを本格導入するうえでは、避けて通れない概念となるでしょう。Gartnerも、「2027年までに35%の国が、独自の文脈データを用いた地域固有のAIプラットフォームにロックインされる」と予測しており、ソブリンAIを巡る動きは今後さらに加速していくと見られます。
その他、注目の予測をいくつか紹介
最後に、個人的に気になった予測をいくつか。両方ともThe informationからです。
「継続学習」が現実に(Stephanie Palazzolo)
OpenAIまたはAnthropicが「継続学習」機能を持つモデルをリリース。人間のようにリアルタイムで学習でき、データと計算能力の必要性が減少。チップメーカーやクラウドプロバイダーにとっては悪いニュース。
継続学習は機械学習技術における聖杯と言っても過言ではありません。かつてより研究されてきたもの、いまだに実用化には至っていません。現在の生成AI技術の限界の多くが変化に対応する能力の欠如から来ると考えられており、非常に大きなゲームチェンジャーとなるでしょう。
証券取引所が予測市場を買収(Yueqi Yang)
主要証券取引所がPolymarketやKalshiなどの予測市場を買収。NYSE、Nasdaq、CMEにとって競争脅威となっている。
未来の出来事にお金をかけることができる場所はこれまでも選挙結果の予測などで引用されることがありましたが、さらに幅広い事象に関する予測にベットできるPolymarketなどのサービスが2025年に大ブレイクしました。NYSEの親会社であるIntercontinental ExchangeはすでにPolymarketに$2Bを出資しています。
AIに関する予測も多数あります例えば、どの会社が2026年6月末にもっとも性能の高いAIモデルを持っているか、だと、53%がGoogleと考えているようです。
2026年のAI業界もホットな動きが沢山ありそうですので、この続きは予測マーケットで!






